日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームが続く中、DXに取り組む企業から「DXがうまく回らない」との声が聞こえてくるようになった。理由を聞いてみると「経営トップがDXへの関心を失った」「役員がDXの優先順位を下げた」といったあきれた答えが返ってくる。DXとはデジタルを活用したビジネス構造の変革だ。経営トップや幹部が強く関与しない限り、DXの推進は夢のまた夢。そしてデジタル革命の時代にDXを放棄しては、企業の未来は失われる。

日経クロステックの木村岳史編集委員
日経クロステックの木村岳史編集委員
(写真:北山 宏一)

 実際、多くの企業でDXの取り組みが「腐り」始めている。中には「草の根DX」や「現場でのDX活用の推進」といった意味不明のスローガンを唱える企業さえある。「現場でのDX活用」などはDXでも何でもなく、「現場でのIT活用」を言い換えたにすぎない。30年以上前にブームとなったエンドユーザーコンピューティング(EUC)などと本質的に変わるところはなく、その多くがこれまでの失敗と同様に、デジタル(=IT)による部分最適と混乱を生み出すだけに終わるだろう。

 DXの一環として進められている基幹系システムの刷新についても、同じことが言える。DXを推進するためには、老朽化してデータ活用もままならない基幹系システムのモダナイズと併せて、全社的な業務改革が欠かせない。しかし、これとてBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)などの一環として多くの企業が試みて、しかばね累々の結果となったかつての取り組みと変わらない。経営トップらが自ら主導しようとせず、現場に丸投げしているならば「いつか来た道」をたどる可能性が高い。

 今、DXを推進しているという企業は自らの取り組みに見直しが必要だ。DXの「魂」は、デジタルではなくトランスフォーメーション(変革)のほうである。自社のDXが本当に変革の取り組みなのか、一度自問すべきだろう。2023年9月27~28日に東京国際フォーラムで開催する「日経クロステックNEXT 東京 2023」では、日経クロステックの名物コラム「極言暴論」を執筆する木村岳史編集委員が登壇する。記事と同様、一刀両断の切れ味で問題の本質と打開に向けた方策を解説する。

DXの祭典「日経クロステックNEXT 東京 2023」

 本イベントでは、日経クロステック編集長陣が注目技術の動向や本質、メリット、リスクを解説。DX先進企業の経営幹部や変革リーダーが、DX成功の法則を明かします。さらに、GX(グリーントランスフォーメーション)や次世代自動車/MaaS、量子コンピューター、Web3、メタバースなど話題のテーマについては、有識者・著名人による講演を通じて、旬の情報が入手いただけます。