テクノロジー専門メディア「日経クロステック」(日経BP)は、「日経クロステックが選ぶCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2025」の受賞者を決定した。

 2025年7月初旬に実施した審査会では、CIO/CDOオブ・ザ・イヤー特別賞に日本取引所グループの田倉聡史常務執行役CIOとみんなの銀行の宮本昌明取締役常務執行役員CIOを選定した。2024年10月16日~17日に東京国際フォーラム(東京・千代田)で開催するイベント「日経クロステックNEXT 東京 2025」で記念講演・ネットワーキング(名刺交換会)・表彰式を実施する。

 田倉氏と宮本氏に共通するのは、難度の高い大規模プロジェクトを率いて推進し、軌道に乗せた点だ。

「日経クロステックが選ぶCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2025」特別賞を受賞した(左から)日本取引所グループ(JPX)の田倉聡史氏、みんなの銀行の宮本昌明氏
「日経クロステックが選ぶCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2025」特別賞を受賞した(左から)日本取引所グループ(JPX)の田倉聡史氏、みんなの銀行の宮本昌明氏
(写真:村田 和聡(田倉氏)、みんなの銀行(宮本氏))
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 田倉氏が率いたのはJPX傘下の東京証券取引所の現物株の売買システム「arrowhead(アローヘッド)4.0」の開発プロジェクトだ。arrowheadは1日当たり5兆円規模の株式売買をマッチングさせる、名実ともに日本の証券業界の心臓部を担うシステムである。

 arrowheadは2020年に大規模障害を起こしている。新たなarrowhead4.0では大規模障害の経験を踏まえ、開発の基本方針として「レジリエンス(復元力)」の強化を掲げた。それまでのarrowheadは「ネバーストップ」、すなわちシステム障害を起こさないことを重視していた。それに加え、万一システム障害が起こった際に復旧までの時間を短縮し、市場参加者の取引機会を確保することを重視した。

 プロジェクトではレジリエンスという抽象的な概念を具体的なシステム要件に落とし込むとともに、復旧マニュアルや運用体制も整備。証券会社や取引関連システムの提供ベンダーなどのステークホルダーとも丹念にコミュニケーションを取りながら、約3年の期間をかけて2024年11月に本番稼働を迎えた。

 宮本氏が率いたのは、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)傘下のデジタルバンクであるみんなの銀行のシステム開発だ。福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行という3つの従来型銀行を持つふくおかFGの中から、「銀行らしくない」銀行を目指して新たなデジタルバンクとしてみんなの銀行の立ち上げに挑戦した。

 システムについても、銀行取引の中核を成す勘定系を含めてフルクラウドで構築。国内の銀行で勘定系までクラウドで構築する例はまだ数えるほどしかなく、フルクラウドは先駆的な取り組みだ。2021年5月に開業し、現在までに130万口座を突破。顧客層もふくおかFG傘下の既存行と異なり、首都圏・関西圏で50%超、年代も15~39歳のデジタルネーティブ世代で約7割と、新たな顧客の獲得を実現している。

 さらに銀行サービスの機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として外部に開放し、BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の枠組みで銀行業界以外の企業が銀行サービスを提供できるようにしている。みんなの銀行向けに開発した勘定系システムを、三菱UFJ銀行が2026年度に開業予定のデジタルバンク「エムット」向けに外販するなど、新たな成果も出している。

2025年7月初旬に実施した「日経クロステックが選ぶCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2025」審査委員会の様子
2025年7月初旬に実施した「日経クロステックが選ぶCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2025」審査委員会の様子
(写真:日経クロステック)
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田倉 聡史(たくら・さとし)氏
日本取引所グループ(JPX) 常務執行役CIO
1991年東京証券取引所(東証)入所。日本取引所グループ(JPX)IT企画部長、大阪取引所IT開発部デリバティブシステム部長、JPX執行役、JPX総研執行役員などを経て2024年4月から現職。東証、大阪取引所、JPX総研のそれぞれ常務執行役員を兼任。
宮本 昌明(みやもと・まさあき)氏
みんなの銀行 取締役常務執行役員CIO
日本総合研究所、楽天(現楽天グループ)、ジャパンネット銀行(現PayPay銀行)を経て、ふくおかフィナンシャルグループに入社。みんなの銀行の立ち上げに参画し、銀行システムの開発を推進。みんなの銀行のシステムを開発するゼロバンク・デザインファクトリーのCIOも兼任。