スーパーゼネコンの一角を占める鹿島は2023年8月8日、自社専用の対話型AI(人工知能)である「Kajima ChatAI」を、日本マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」を活用してイントラネット内に構築し、自社とグループ会社の従業員約2万人を対象に運用を始めたと発表した。ChatGPTと同等のサービスを利用可能だ。

「Kajima ChatAI」のチャット画面(出所:鹿島)
「Kajima ChatAI」のチャット画面(出所:鹿島)
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 鹿島はこれまで、ChatGPTの業務利用を禁止していた。入力した情報がAIの学習に利用され、第三者の回答に反映されることで、重要な情報が漏洩するリスクがあったからだ。同社はイントラネット内に環境を構築した上で、利用時の認証や利用履歴の記録といった機能も設け、安全性を高めた。建設業界では、他業種に比べてChatGPTに代表される生成AIの認知度が著しく低かった。鹿島が活用を始めたことで、大手ゼネコンを中心に利用が急拡大する可能性がある。

 生成AIは、ホワイトカラーの業務に大きな影響を与えるとされる。1級建築士も例外ではない。プロンプト(指示文)を入力するだけで精緻な画像を瞬時に出力する画像生成AIのMidjourneyやStable Diffusionを使いこなす設計者も現れ始めた。

 手描きのスケッチからパース(建物の内外観)画像を生成したり、過去に設計した建物の画像を学習させて自分らしさを出したりと、様々な利用方法が考えられる。顧客のニーズを聞き取り、浮かび上がったキーワードを基にその場で画像を生成できるため、発注者との合意形成が容易になるかもしれない。

大林組の設計支援ツール「AiCorb(アイコルブ)」(出所:大林組)
大林組の設計支援ツール「AiCorb(アイコルブ)」(出所:大林組)
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 大林組は23年7月、AIを活用した設計支援ツール「AiCorb(アイコルブ)」の社内運用を開始した。手描きのスケッチと建物をイメージした文章を基に、建物の外観デザインの案を短時間で出力し、それを基に3次元モデルを作成するツールだ。

 急速に進化を続ける生成AIは、建設業界でどのように広がっていくのか。建築専門誌「日経アーキテクチュア」と土木専門誌「日経コンストラクション」の記者が、23年9月27~28日に東京国際フォーラムで開催予定の「日経クロステックNEXT 東京 2023」で、最新の取材成果を基に解説する。

知られざる「生成AI×建設」のインパクト、ChatGPTやMidjourneyはアナログ業界に風穴を開けるか
2023/09/28 (木) 10:00 ~ 10:40

 ChatGPTやMidjourneyのような生成AIが、1級建築士や建設技術者の仕事のプロセスを大きく変えようとしている。日経アーキテクチュアと日経コンストラクションの記者が、「生成AI×建設」のインパクトを実例を交えて解説する。