あらゆる企業の経営課題となったSDGs。Amazonでサステナビリティ・アーキテクチャーのVP(副社長)を務めるエイドリアン・コッククロフト氏に、日本企業に向けた課題解決の方法論をオンラインで聞いた。聞き手はアマゾン ウェブ サービス ジャパン 事業開発統括本部 統括本部長の佐藤有紀子氏。

佐藤氏 Amazon/AWSはお客様のSDGsの目標達成のために、どのような貢献ができますか。

コッククロフト氏 Amazon/AWSはSDGsの様々な分野で貢献しています。国連で定められた17の目標のうち、特に7番目の目標であるクリーンエネルギーに対して長年にわたり取り組んできました。これは13番目の目標である気候変動対策にも貢献することになります。

 配送トラックも含めて、Amazon/AWSが使用する電力はカーボンインテンシティ(炭素強度:CO2排出量を一次エネルギー供給で割った計数)を常に考慮しています。Amazonはヨーロッパにおいて370万キロワットを超える再生可能エネルギーを購入する最大の企業となり、アメリカ大陸でも再生可能エネルギー利用率100%に向けて順調に歩みを進めています。

 アジアでも大きな進展がありました。2021年9月、Amazonは三菱商事と、太陽光発電プロジェクトでの電力購入契約(PPA)を締結しました。日本で初のコーポレートPPAとして、日本における再生可能エネルギーの活用を広げ、価格の適正化を促進します。今後もアジアの国々により多くの再生可能エネルギー供給を可能とする革新的なソリューションを展開していきたいと考えています。

佐藤氏 ではAWSを利用するお客様は、どのような形で自身のカーボンフットプリントを知ることができるのでしょうか。

コッククロフト氏 昨年末に開催された「AWS re:Invent」において、AWSサービスを利用した際のCO2排出量を示すレポートを提供することを発表しました。また、お客様のワークロードの炭素強度がどのように下がっていくかを示す予測機能も含めた、AWSカスタマーカーボンフットプリントツールをご用意しております。

オンプレミスを大きく上回るAWSの優位性

佐藤氏 オンプレミスのデータセンターと比較したとき、サステナビリティの観点からAWSにはどのような優位性がありますか。

コッククロフト氏 調査会社451 Researchが発行しているレポートによれば、オンプレミスのデータセンターと同一のワークロードをAWSのクラウド上で実行した場合、エネルギーの使用量は約80%も削減されるという結果が示されています。これはAWSのデータセンターで採用されている間接蒸発式冷却をはじめとする非常に効率的な冷却の仕組み、サーバーのリソースを無駄に稼働させない高い利用率、最適化されたハードウエアなどによるものです。

 なお、先に述べたアジアにおけるPPA市場の動向などは、まだこのレポートには反映されていません。したがってAWSの世界中のリージョンで再生可能エネルギーの購入・利用が進むにつれて、お客様のオンプレミスのデータセンターとの比較で、CO2排出量を最大93%削減できる可能性があると見込んでいます。

 さらにAWSではエネルギー効率を高めるために、Gravitonプロセッサーを独自開発し、クラウドへの実装を進めています。AWSではAWS Lambdaやデータベース、内部コントロールプレーンなど、様々なクラウドサービスをGravitonプロセッサーで動作するように順次移行を進めており、お客様は特に意識することなくAWSを利用するだけで、Gravitonプロセッサーによる価格性能比の向上やエネルギー使用量削減といったメリットを享受できます。

SDGsの目標を達成するシステムの留意点

佐藤氏 一方でお客様の技術責任者の方々は、SDGsの目標を達成するためにシステムアーキテクチャーについてどのような点を考慮すべきでしょうか。

コッククロフト氏 まず行っていただきたいことは、システムリソースの使用量の削減や負荷軽減です。例えばほとんどのシステムについてログを取得してファイルに保存し、定期的にバックアップを行っていますが、これらのデータの保存期間が長すぎたりしていないでしょうか。古いファイルを自動的に削除することでディスク容量を削減することができ、ひいてはエネルギー使用量を削減することができます。

 監査やセキュリティーの証跡などの重要データについては、システムのエラーログやデバッグ情報などとは別のファイルやストレージに分離して長期保存することをおすすめします。このようにログの重要性に応じて分けて管理することで、一時的に利用できればよいログは不要になった時点ですぐに削除が可能となります。

 続いて行っていただきたいのは、ワークロードをより効率的に実行するための様々な最適化です。例えば、AWSではデータ圧縮の標準方式をZIPからZStandardに変更することで、ストレージの保存容量を約30%節約しています。こうしてワークロードを効率化したならば、それをより軽量なハードウエア上で、高い稼働率で実行させます。そこでのコンピュートの効率向上に大きな効果を発揮するアーキテクチャーとして推奨しているのが、サーバーレスの「AWS Lambda」です。

 また、これまであまり気にかけていなかったワークロードの実行時間についても、今後はぜひ留意していただければと思います。CO2排出量を削減し、サステナビリティを高めるためには、スケジュールされたワークロードを夜間ではなく、太陽光発電をフルに利用できる日中に実行することがベストとなります。

3つのステップで進めるSDGs対応の強化

佐藤氏 いまやSDGsは、あらゆる企業がその目標達成の責任を果たさなければならない経営課題となりました。サステナビリティを“自分事”として捉え、対応していかなければならない日本企業の皆様に向けて、ぜひアドバイスをお願いいたします。

コッククロフト氏 今後、あらゆる組織は自分たちのカーボンフットプリントの推定値を報告するとともに、さらにその測定精度を高めつつ、エネルギー利用の最適化やCO2削減に取り組んでいかなければなりません。特にヨーロッパでは今後数年のうちに、CO2排出量および気候変動リスクに対する報告を義務付けた規制が導入されると予想されています。

 このような背景をしっかり見据えて、最初のステップとしてビジネス全体のカーボンフットプリントを簡単に見積もる仕組みづくりから始めることを提案します。具体的には財務フローに基づいてシンプルなモデルを作ることで、業界平均的なCO2排出量の係数を用いて自社の事業規模に応じたCO2排出量を見積もることができます。

 次のステップとして自社のビジネスで実際に使用したエネルギーや電力を測定し、より正確なCO2排出量の推定を行っていきます。ビジネス全体を見渡し、正確な業務プロセスや使用している材料などを反映した可視化モデルを開発します。このモデルに基づき自社のどの部分が最も大量のCO2を排出しているのかを確認し、改善のアクションを起こします。

 そして3つめのステップとして、オフィスのファシリティーや自動車、PCなどを従業員が利用することで発生する、個人単位のCO2排出量も算出して最適化していきます。当然のことながらこのモデルは非常に複雑なものとなりますが、AWSではデジタルツインを活用したソリューションを提案しています。

 AWSは日本のお客様と一緒になってサステナビリティに関する課題解決に取り組んでいきますので、ぜひお声がけをいただければ幸いです。

お問い合わせ

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
URL https://aws.amazon.com/jp/

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