顧客第一で長年事業を営む大樹生命保険。同社は営業職員向けタブレット型情報端末システムをキンドリルの支援のもとに刷新した。基盤にはコンテナとして「Red Hat OpenShift」を導入し、開発・テスト業務を大幅に効率化した。顧客が望む方法での接点を創出するデジタル基盤の構築を見据え、システムの高度化を実現している。

 大樹生命保険(旧三井生命保険)は1927年の創業以来、「BESTパートナー」として、個人保険・医療保険・個人年金から資産運用まで、様々なニーズに応える保険商品を通じて、顧客に安心を提供し続けている。2016年4月より、日本生命保険相互会社との経営統合による新体制を発足し、商品相互供給や人材相互交流による人材育成・ノウハウ共有の推進など、統合によるシナジーを着実に実現している。

 大樹生命の情報システムは、日本IBMと共同設立した大樹生命アイテクノロジー(TLI)が担う。運用管理およびインフラ全般はキンドリルにアウトソースし、二人三脚で大樹生命の事業を支える。

 大樹生命では、一世代前の営業職員用携帯端末を2014年に導入している。現場の営業職員に配布したタブレット型情報端末「ミレット」を柱に、顧客サービス向上や業務効率化などを推進する。当初は狙い通りの効果が得られていたが、デジタルを活用した営業活動推進や、アプリケーションの種類やユーザー数の増加が進むにつれ、いくつか課題が浮上してきた。

 「レスポンス低下が深刻化していました。営業職員が訪問先でご提案活動中、お客様をお待たせする事態が起きており、現場からは改善してほしいと声があがっていました」と大樹生命保険 システム企画部 部長 安藤敏氏は振り返る。ほかにもユーザーインターフェース(UI)の一貫性についても課題として捉えていた。

 バックエンドの基盤でも課題があった。「従来はモノリシックなアーキテクチャーで、複数のシステムが密結合していました。そのため、機能追加や改修などを行う際、影響する範囲が広く、多くの時間と手間を費やしていました」と大樹生命アイテクノロジー 開発本部 営業フロントシステムグループ 上席課長 岩石晃氏は明かす。

 大樹生命アイテクノロジー 技術・運用本部 基盤開発グループ グループマネージャー 額田正之氏も「スピード開発がより求められる昨今、複数案件を並行して進めていくなかで、開発/テスト/本番用のサーバー環境を迅速かつ柔軟に用意しなければなりませんが、対応が非常に困難でした」と基盤の課題を捉えていた。

アプリケーションの可搬性を重視し、新たな技術の導入にチャレンジ

 2017年、現行機器およびソフトウエアの保守切れを機に、アプリケーションもサーバーも含んで全面刷新を行うことになった。従前の課題解決を目指すとともに、さらなるシステムの高度化も図った。

 「アーキテクチャーにはマイクロサービスを採用しました。アプリケーションを機能ごとに分割・最適化し、開発保守性を向上できます。あわせてDevOpsの考え方も取り入れ、基盤にはコンテナを導入しました」(岩石氏)

 なかでもポイントとなったのがコンテナである。従来は仮想マシンによる基盤を用いていたが、アプリケーションへのリソース割り当ての柔軟性に欠け、並行開発に必要なテスト用サーバーの提供に多くの時間を要するなどの問題があった。

 「コンテナは仮想マシンに比べ、リソース割り当てをより柔軟に行えます。アプリケーションの可搬性に優れ、環境の分離や構築の自動化、コード化も容易です。テスト用などのサーバーの用意、機能追加・改修、アクセス急増に伴う処理能力の強化などが柔軟かつ迅速に行えます」(額田氏)

 コンテナには、Red Hatの「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)を採用した。業界標準であるOSSのKubernetesに、各種ツールや長期サポートサービスなどを加えた製品である。

 「OpenShiftにはエンタープライズレベルのサポートがあり、技術支援を含む導入環境が整っていました。当社の約8000人の営業職員と本部社員が同時に使える安定性とパフォーマンスを備えているのも魅力です。稼働状況の可視化しやすさも採用の後押しになりました」(岩石氏)

PoCで効果を実感、チーム一丸となって本稼働へ

 営業支援システムの刷新プロジェクトは、2018年から約1年かけて開発計画を立て、翌年から着手し、2021年5月に新たなタブレット型営業端末「ミレット Plus」として本稼働を迎えた。

 コンテナに関してはプロジェクトの計画段階で、PoCを約1年かけて実施した。「わざと障害を発生させて、OpenShiftが本当に自己修復できるのかなど、実際に試して自分たちの目で確かめました。停止時間もほぼなく、すぐ起動するのには驚きました」(額田氏)

 システム全体としては、CI/CDによる開発の標準化・自動化、マイクロサービス化、UIの統一なども実施した。

 「マイクロサービス化では、従来3であったモジュール数を34に分割しました。分割の基準は、業務部門ごとでは運用が立ち行かなくなるので、リリースしやすいタイミングの単位としました」(岩石氏)

 額田氏はプロジェクトを通じたキンドリルの支援を評して、「開発・運用の現場で常に隣にいる存在でした。コンテナに不慣れな我々に勉強会などを開催し、人材育成の面でもサポートしてくれました。その結果、チーム全体のスキルの底上げと当社の若手社員の学習意欲向上にもつながりました。コンテナ基盤の設計時も、複雑になりがちな構成を可能な限りシンプルにすることで、長く使えるよう導いてくれました」と目を細める。

 キンドリルはほかにも、海外スタッフと連携して国内ではまだ限定的な情報を入手するなど、包括的な支援をした。キンドリルジャパン テクノロジー本部 クライアント技術戦略 チーフアーキテクト 木内卓朗氏はプロジェクトが成功した要因を「アプリケーションをコンテナに乗せただけでは効果は得られません。大樹生命保険様とTLI様は、Webフレームワークの標準化など以前からアプリケーションとインフラで協業する取り組みや組織があり、コンテナの設計や構築も協業体制で推進したため、大きな効果を得ることに成功したといえます」と話す。

営業システムのパフォーマンス向上を足がかりに、さらなる顧客体験向上へ

 大樹生命保険は営業支援システムの刷新によって、狙い通りに課題解決とシステムの高度化を達成した。

 安藤氏はビジネス面での効果について、「ミレットPlus端末はレスポンスが向上し、お客様を待たせることがなくなりました。UIも統一され、使いやすくなったと営業職員の間で評判です。また、Microsoft TeamsをミレットPlus端末に導入し、非対面でもお客様に対応できるようにしたので、コロナ禍でも営業活動の停滞を防げました」と語る。

 システム面の効果では、OpenShiftによるコンテナの果たす役割が大きい。「コンテナによって、環境依存が少なく、可搬性に優れた基盤を構築でき、開発やテストをスムーズに行えるようになりました。これまではアプリケーションのリリースの際、サービスを30分ほど止める必要がありましたが、それをゼロにできました。1日あたりに可能なリリース回数も、従来の2.1回から23.8回と10倍以上に増えました」(岩石氏)

 開発・テスト環境の用意も、自動化などとあわせて大幅に効率化できた。「今までは新規テスト環境構築に40日ほど要していましたが、今は半日で済みます。リソース増強などのシステム拡張も容易です。また、自動化が進んだことにより開発資源のリリース管理のための専任エンジニアが不要となりました。エンジニアが開発やテストなどのコア業務に集中できるようになったのも大きな成果です」(額田氏)

 システム全体では、「マイクロサービス化の恩恵で、影響調査の期間を圧縮し、開発やテストをよりスムーズに行えるようになりました。柔軟性と拡張性を大幅に向上し、現場の要望や市場の変化にタイムリーに反応できるようになったことで、顧客サービスや業務生産性の向上を今まで以上に推進できる体制ができました」と安藤氏は笑みを浮かべる。

 今後は営業支援システムをさらに進化させるとともに、この成果をほかのシステムにも広げていく。「今回構築したコンテナ基盤をIBMクラウドに展開し、お客様が契約変更手続きなどを行えるデジタル基盤を乗せるべく、開発を進めています。将来はレガシーシステム刷新への活用なども構想しています。キンドリルの助けを借りてシステム最適化を意欲的に進め、当社が掲げる『お客さまに信頼され選ばれる会社』への道を引き続きまい進していきたいですね」(安藤氏)

関連リンク

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