個人投資キーマンのリレートーク with 経済キャスター・鈴木ともみ
森居 誠司(マン・インベストメンツ証券取締役会長)

ヘッジファンドは守る運用ファンド・オブ・ファンズで個人の投資も可能に

「ヘッジファンド」と聞くと、何やら得体の知れない、とてもリスクのある、一部の富裕層にしか手の出ない投資手段というイメージがあります。でも、マン・インベストメンツ証券取締役会長の森居誠司さんにヘッジファンドのお話を伺ったところ、必ずしもそうではないということに気づきました。

鈴木 いきなりですが、ヘッジファンドって何なのでしょうか?

森居 直訳しますと、「ヘッジ」は守る。「ファンド」は資金や運用という意味で、守る運用ということになります。運用の歴史を紐解いてみますと、長年にわたって行なわれてきたのは、「攻める運用」でした。株式投資に例えて言えば、たくさんある個別銘柄のなかから、業績などをチェックして、将来的に成長が期待できる企業の株式をピックアップする。保有し続け、株価が値上がりしたところで売却して、利益を確定させる。株式だけでなく、債券や不動産も同じです。ただ、経済そのものは常に右肩上がりということはなく、波乱含みの展開になるケースもあります。特に最近は、波乱含みの展開が増えてきた。したがって、守りの運用も必要になってきました。

ちょっと歴史的な話をしますと、1919年のベルサイユ講和条約の前後に、世界の覇権はイギリスから米国へと移りました。この時、第一次世界大戦の影響で、ヨーロッパは戦勝国も戦敗国もすべて焼け野原になったのですが、それから10年間、米国の株価は糸の切れた凧のようにどんどん上がっていきました。 それが、1929年の米国株価大暴落で、株価は3年間で十分の一まで下落。ようやく立ち直ったかと思ったら、今度は第二次世界大戦後の1946年から3年間連続で、米国の株価は下落しました。戦勝国であったにも関わらず。 このように、2回も大きなやけどを負った結果、そうならないためにはどうすれば良いのかということが真剣に考えられるようになり、ヘッジファンドの概念が生まれてきたのです。

鈴木 ヘッジファンドの運用事情はどうなっているのでしょうか?

森居 ヘッジファンドというと、資本市場をかく乱する諸悪の根源というイメージがありますが、決してそのようなことはありません。ヘッジファンドには二つの大きな誤解があります。

一つは「大きなリスクを取る」。中にはそのようなファンドもありますが、歴史的な背景からすれば、そもそもヘッジファンドはリスクを減らすために考案されたものです。

二つ目の誤解は、大きなリターンを得られるということですが、これまたハイリターンを実現しているファンドはごく一部です。現在、世界には1万本のヘッジファンドがありますが、その平均打率(運用利回り)は10%程度です。ヘッジファンドにもさまざまな種類がありますが、8年間の運用実績を見ると、10%±4%程度というところです。特に運用のプロは、コンスタントなリターンをいかに長期にわたって維持していくかということが大事になってきます。運用にはサスティナビリティ(持続可能性)が重要ということです。昨年は年間50%以上のリターンを上げてホームラン王、その翌年は大失敗して三振王というのではダメなのです。

鈴木 恐らく、このような話を伺っていると、個人投資家の方のなかにも、ヘッジファンドを買ってみたいという人がいらっしゃるのではないかと思います。個人では買えませんか?

<聞き手> 鈴木ともみ(経済キャスター)

森居 本当は、ヘッジファンドに対する誤解を解いていただくためにも、個人の皆様にも投資していただくのが大事なのですが、なかなか手が届きにくいという面があります。ヘッジファンドは世界中に1万本以上あるわけですが、会社情報のような媒体が存在していない。どこにどのような運用者がいるのかも分からない。もちろん、どのようなリターンを残しているのかも見えてこない。ここが一番の難点です。

方法があるとしたら二つ。一つは、自分で試行錯誤をして探す。アラカルト料理のようなもので、自分で試行錯誤を繰り返しながら、好みの組み合わせを作り上げていく。非常に難しい方法です。

もう一つは、コース料理というか、幕の内弁当というか、要は料理長の才覚と経験で盛り合わせにしてもらう。これは投資家にとっては非常に便利ですが、作る方からすれば非常に大変です。我々は、ヘッジファンド運用会社であると同時に、ファンド・オブ・ヘッジファンズの会社でもありますので、この料理長の役割を果たすこともあります。つまり、我々の目利きによって、世界中にある1万本のヘッジファンドのなかから、優れたファンドを探し出し、それを複数組み合わせて、1本のファンド・オブ・ヘッジファンズを組み立てます。これならば個人でも比較的手軽に購入できますし、日本の金融機関の中にも、弊社のファンドを販売しているところもあります。

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